東京地方裁判所 平成3年(む)229号 決定 1991年5月15日
申立人
A
主文
本件各準抗告を棄却する。
理由
一 本件各準抗告の趣旨及び理由は、別紙準抗告申立書記載のとおりであるからこれを引用する。
二 ところで、捜索に関する裁判はそもそも刑訴法四二九条一項の準抗告の対象に含まれず、また差押許可状発付の裁判に対する不服申立がその対象に含まれるか否かはともかくとして、少なくともそれによる差押処分がなされた後は申立の利益がないから、捜索差押許可状発付に関する申立は不適法であり、更に捜索差押処分の際撮影された写真の没収をいう点も刑訴法四三〇条二項の対象に含まれないから、これに関する申立も不適法である。
その余の刑訴法四三〇条二項の申立については、右申立書によると、申立人は、差押処分の際現場に立会った者であり、本件捜索差押の状況並びに押収物の内容についてよく知りうる者であると主張するにとどまり、一件記録によっても、申立人は他に住居を有し、組織の一員として当日本件捜索差押の現場である前進社第二ビルに居合わせたため、その責任者から指示されて現場の一部につき立会人となったに過ぎない者であって、本件押収物の所有者、保管者など、差押により不利益を受ける立場にあるものとは認められない。したがって、これらについても申立人としての適格を欠き、不適法である。
よって、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項により、本件各準抗告を棄却する。
(裁判長裁判官小出錞一 裁判官加藤就一 裁判官新穂均)
別紙準抗告申立書
申立人 A
申立の趣旨
一、被疑者不詳の現住建造物等放火、火炎ビンの使用等の処罰に関する法律違反被疑事件につき、警視庁公安部公安一課司法警察員・平賀謙三が、申立人に対してなした別紙押収品目録記載の物品に対してなした差押処分を取り消す
二、一記載の捜索差押処分の根拠となった捜索差押許可状の発付を取り消す
三、警視庁公安部公安一課司法警察員・平賀謙三は、別紙押収品目録記載の物品を直ちに申立人に返還せよ
四、警視庁公安部公安一課司法警察員が捜索・差押許可状指定の差押目的物以外の物について、検証令状によることなく写真撮影した写真全部を没収する
との決定を求める。
申立の理由
第一 当事者
請求人である私は、本件捜索・差押が実施された東京都豊島区千早一〜十九〜十四前進社第二ビルにおいて、本件捜索・差押に立ち会った者であり、本件捜索・差押の状況並びに押収物品の内容についてよく知り得る者である。
第二ないし第五<省略>
押収品目録交付書<省略>